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神戸地方裁判所 平成10年(ワ)635号 判決

原告・反訴被告

亀田泰次

被告・反訴原告

岡本こと 嚴善

主文

一  被告は、原告に対し、金三六四万三〇七七円及びこれに対する平成九年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告は、被告に対し、金一万一五六七円及びこれに対する平成九年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告及び被告のその余の各請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

五  この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  本訴

被告は、原告に対し、金四七二万六五五三円及びこれに対する平成九年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴

原告は、被告に対し、金一二万七六七八円及びこれに対する平成九年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、後記交通事故(以下「本件事故」という。)により傷害を負うとともに物損を被った原告、及び、物損を被った被告が、それぞれ相手方に対し、いずれも民法七〇九条に基づき、損害賠償を求める事案である。

なお、付帯請求はいずれも、本件事故の発生した日から支払済みまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。

二  争いのない事実

1  交通事故の発生

(一) 発生日時

平成九年八月三一日午後一〇時五分ころ

(二) 発生場所

神戸市中央区山本通三丁目六番一〇号 信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 争いのない範囲の事故態様

原告は、普通乗用自動車(長野三三の二二五二。以下「原告車両」という。)を運転し、本件交差点を西から南へ右折しようとしていた。

他方、被告は、原動機付自転車(神戸長に八三七九。以下「被告車両」という。)を運転し、本件交差点を東から西へ直進しようとしていた。

そして、本件交差点内で、原告車両の前面右部と被告車両の前部とが衝突した。

2  被告の責任原因

被告車両が本件交差点に進入した際、被告車両が従うべき本件交差点の西行き車両用の信号は、少なくとも黄色であった(後述のとおり、原告はこれを赤色である旨主張し、被告はこれを黄色である旨主張する。)。

したがって、被告には、本件事故に関し、本件交差点に進入するに際しての安全確認義務違反があるから、被告は、民法七〇九条により、原告に生じた損害を賠償する責任がある。

三  争点

本件の主要な争点は次のとおりである。

1  本件事故の態様、及び、これを前提とした原告の過失の有無、過失相殺の要否、程度

2  原告及び被告に生じた損害額

四  争点1(本件事故の態様等)に関する当事者の主張

1  原告

本件交差点の東西方向の信号機は、いわゆる時差式信号であり、被告車両が従うべき西行き車両用の信号機の色が黄色から赤色になってもしばらくの間は、原告車両が従うべき東行き車両用の信号機の色は青色を示している。

そして、本件事故の直前、原告車両は、東行き車両用の青色信号に従って本件交差点を西から南へ右折を開始したのに対し、被告車両は、西行き車両用の赤色信号を無視して本件交差点を東から西へ直進しようとした。

したがって、本件事故は被告の一方的な過失によって生じたというべきであって、原告には過失はなく、原告には被告に生じた損害を賠償する責任はない。また、原告の損害について過失相殺による減額をするのは相当ではない。

2  被告

本件交差点の東西方向の信号機が、原告の主張するようないわゆる時差式信号であったことは認める。

本件事故の直前、原告車両は、東行き車両用の青色信号に従って本件交差点を西から南へ右折を開始したのに対し、被告車両は、西行き車両用の信号が青色から黄色に変わったので、そのまま、東から西へ直進しようとしたものであって、被告車両が本件交差点に進入しようとした時点の右信号機の色は黄色であった。

したがって、本件事故は被告の一方的な過失によるものではなく、原告にも一定程度の過失が存在するから、原告も、被告に生じた損害を賠償する責任があり、原告及び被告に生じた損害については、相応の過失相殺がされるべきである。

五  口頭弁論の終結の日

本件の口頭弁論の終結の日は平成一〇年一一月二六日である。

第三争点に対する判断

一  争点1(本件事故の態様等)

1  乙第三ないし第五号証、第七号証の一ないし三、第八号証、原告及び被告の各本人尋問の結果によると、本件事故の態様に関し、前記争いのない事実のほかに、次の事実を認めることができる。

(一) 本件交差点は、ほぼ東西に走る道路とほぼ南北に走る道路とからなる十字路である。ただし、次に述べるように、本件交差点の東側の道路と西側の道路、北側の道路と南側の道路とのそれぞれの幅員が異なっているため、やや変形した十字路となっている。

すなわち、本件交差点の西側の道路は、片側一車線、両側合計二車線で、その幅員は合計約一〇・八メートルである。これに対し、本件交差点の東側の道路は、西行き一方通行で、その幅員は約四・七五メートルである。

また、本件交差点の北側の道路は、車線の区別はなく、幅員は約六・八メートルで(本件交差点の直近北側は一方通行の規制はない。)、本件交差点の南側の道路は、片側一車線、両側合計二車線で、その幅員は合計約九・〇メートルである。

なお、本件交差点の東側の道路には、本件交差点の東端から東側約八・〇メートルの地点に、停止線が記されている。

また、東西道路の最高速度は四〇キロメートル毎時である。

(二) 本件交差点の東西方向の信号機は、いわゆる時差式信号である。

本件事故当時の、右信号機の具体的動作状況は、一〇〇秒を一サイクルとし、東行き車両用、西行き車両用が同時に青色になってから、東行き車両用信号機は、青色が六〇秒、黄色が四秒、赤色が三六秒であるのに対し、西行き車両用信号機は、青色が二八秒、黄色が四秒、赤色が六八秒である。したがって、西行き車両用信号機が青色から黄色に転じた後、なお三二秒間は、東行き車両用信号機は青色を示していることとなる。

(三) 原告は、本件交差点の右信号状況をよく知っていた。

本件事故直前、原告は、原告車両を運転して本件交差点を西から南へ右折すべく、速度を十分に減じて、本件交差点内に進入した。なお、この際、本件交差点内には右折するために停止している車両が一台あり、原告車両は右折車両の二台目であった。

そして、原告車両が本件交差点に進入したのとほぼ時を同じくして、先行車両が南へ右折を開始したので、原告車両がこれに引き続いて右折進行したところ、先行車両がいなくなって視界が開けた前方約九・六メートルの地点(本件交差点の東端付近)に、原告は、対向直進してくる被告車両を認め、直ちに自車に急制動の措置を講じたが及ばず、原告が被告車両を認めた時点の両車両の位置を基準として、原告車両が約二・〇メートル進行した地点、被告車両が約八・〇メートル前進した地点(本件交差点のほぼ中央部である。)で、原告車両の前面右部と被告車両の前部とが衝突した。

(四) 被告は、本件交差点の右信号状況を知らなかった。

本件事故直前、被告は、時速約三五キロメートルの速度で被告車両を運転し、本件交差点東側の停止線の東側約一三・五メートルの地点で、本件交差点の西行き車両用の信号機を初めて見たところ、その信号の色は黄色であった。

そこで、被告は、本件交差点をそのまま渡りきってしまおうと考え、被告車両に加速の措置を講じたが、自車が本件交差点東側の停止線を越えたあたりで、前方約一五・八メートルの地点に、対向右折しようとする原告車両を認め、直ちに自車に急制動の措置を講じたが及ばず、本件交差点内で、原告車両の前面右部と被告車両の前部とが衝突した。

(五) 右衝突後、原告車両は約三・一メートル前進して停止した。

また、被告車両は、衝突した原告車両に引きずられた後に停止し、路面には、被告車両による長さ約一・七メートルの擦過痕が残された。

さらに、被告は、原告車両との衝突により被告車両から投げ出され、右衝突地点の南約四・九メートルの地点(本件交差点内の南側の付近)に転倒した。

2  右認定に関し、特に被告車両が従うべき西行き車両用信号の色について、補充して判示する。

(一) 乙第三ないし第六号証、原告及び被告の各本人尋問の結果によると、次の事実を認めることができる。

(1) 本件事故後、原告及び被告は、それぞれの車両を運転して、最寄りの兵庫県生田警察署に赴いた。そして、そこで、原告車両及び被告車両の実況見分が行われた(乙第三号証)。

(2) 本件事故が発生した日の翌日である平成九年九月一日、原告及び被告を立会人として、本件交差点の実況見分が行われた(乙第四号証)。

右実況見分における原告及び被告の指示説明は、おおむね1で認定した事実と同旨である。

(3) しかし、その後の取調べを通じ、被告は、本件交差点の西行き車両用信号の色について右実況見分における指示説明が事実ではないと感じるようになり、その旨を警察官に申し入れた。

そこで、平成九年九月四日、原告及び被告を立会人として、再び、本件交差点の実況見分が行われた(乙第五号証)。

右実況見分における原告の指示説明は、おおむね1で認定した事実と同旨であるが、被告の指示説明は、後に判示するように、九月一日の実況見分における指示説明とは異なる部分がある。

(4) また、兵庫県生田警察署は、本件事故の目撃者を探していたところ、訴外頂淳子が本件事故を目撃した旨を届け出た。

そこで、平成九年九月二四日、右訴外頂を立会人として、本件交差点の実況見分が行われた(乙第六号証)。

(二) 乙第五号証(平成九年九月四日実施の実況見分調書)によると、右実況見分時の被告の指示説明は、本件交差点の東側の停止線の手前約一四・五メートルの地点で、本件交差点の西行き車両用信号が青色から黄色に変わるのを見たというものであったことが認められる。

また、本訴訟における被告の主張もこれと同旨であり、被告本人尋問の結果の中にもこれに沿う部分がある。なお、右実況見分時の被告の指示説明では、右信号が赤色に変わったのを見たことを示す地点が明らかではないが、被告本人尋問の結果の中には、本件交差点の東側の横断歩道を越えた付近で、右信号が赤色になったと思うとする部分がある。

ところで、右認定のとおり、本件事故当時、本件交差点の西行き車両用信号が黄色を示していた時間は四秒であり、他方、被告車両は、本件事故直前、時速約三五キロメートルの速度からやや加速していたというのであるから、被告が、本件交差点の東側の停止線の手前約一四・五メートルの地点で、本件交差点の西行き車両用信号が青色から黄色に変わるのを見たのであれば、本件交差点の長さを考慮しても、本件交差点の西行き車両用信号が黄色を示している間に、被告車両は、本件交差点を余裕をもって通過することができたはずである。

したがって、本件交差点の西行き車両用信号が青色から黄色に変わった地点、黄色から赤色に変わった地点に関し、乙第五号証の被告の指示説明部分、被告本人尋問の結果は、相矛盾する内容を含んでおり、これらを直ちに採用することができない。

(三) 乙第六号証(平成九年九月二四日実施の訴外頂を立会人とする実況見分調書)によると、右実況見分における訴外頂の指示説明は、自動車を運転して原告車両の後方を同車両と同一方向に進んでいた旨、本件交差点西側にある停止線の西約四・七メートルの地点で本件事故を目撃した旨、右停止線で自車を停止させたが、その時、東行き車両用の対面信号は黄色から赤色に変わった旨であったことが認められる。

ところで、仮に右実況見分における訴外頂の指示説明を前提とすると、前記認定の本件交差点の信号の動作状況により、本件事故が発生したのは、西行き車両用信号が青色から黄色に転じ、三二秒後に東行き車両用信号が青色から黄色に転じ、さらに四秒後に右信号が黄色から赤色に転じたころということになる。

しかし、本件事故は夜間に発生したものであり、右認定のとおり、西行き車両用信号機が黄色を示しているところを被告が見たことは優に認められる。また、右認定のとおり、原告車両が本件交差点に進入した際、本件交差点内には右折するために停止している車両が一台あったのであるから、この時点での西行き車両用信号機の色は、青色から黄色に変わった直後であったとするのが相当である。

したがって、これらの点に照らすと、乙第六号証のうち訴外頂の指示説明部分を直ちに採用することはできない。

(四) なお、これらに対し、乙第四号証(事故の翌日である平成九年九月一日実施の実況見分調書)によると、右実況見分時の被告の指示説明は、1でした事実認定とほぼ同旨であったことが認められる。

そして、1冒頭記載の他の証拠及び右検討に照らし、これは十分に信用することができる。

3  原動機付自転車の最高速度は三〇キロメートル毎時であり(道路交通法二二条一項、同法施行令一一条)、右認定のとおり、本件事故直前の被告車両の速度はこれを超えていた。

また、道路を通行する車両等は信号機の表示する信号に従わなければならないところ(同法七条)、黄色の灯火は、車両等は、停止位置をこえて進行してはならない、ただし、灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く旨を意味するものである(同法施行令二条一項)。そして、右認定のとおり、被告が、本件交差点の西行き車両用の黄色信号を初めて見たのは、本件交差点東側の停止線の東側約一三・五メートルであり、右停止線は、本件交差点の東端からさらに東側約八・〇メートルの地点に記されていたというのであるから、被告が、本件交差点の西行き車両用の信号が黄色を示しているのを見た時、直ちに自車に制動措置を講ずれば、右停止線付近で安全に停止することができたことは明らかである。

ところが、右認定のとおり、被告は、酉行き車両用の信号が黄色を示しているのを見たにもかかわらず、本件交差点をそのまま渡りきってしまおうと考え、被告車両に加速の措置を講じたのであるから、被告には、右信号の表示に従わなかった重大な過失があるというべきである。

他方、車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならないところ(同法三七条)、右認定のとおり、原告は、右折しようとする先行車両に漫然と続いて右折を開始したものであって、反対方向から進行してくる車両の有無を確認していないというべきである。そして、右認定のとおり、本件事故が発生したのは、西行き車両用の信号が黄色から赤色に変わった直後であると認められるから、反対方向から進行してくる車両の有無を確認しないまま右折を開始した原告にも、右折の際の安全確認義務違反の過失があるといわざるをえない。

これらの検討の上で、原告の過失と被告の過失とを対比すると、信号の表示に従わなかった被告の過失の方がはるかに大きいことは明らかであって、右認定の事実を総合勘案すると、具体的には、本件事故に対する過失の割合を、原告が一〇パーセント、被告が九〇パーセントとするのが相当である。

二  争点2のうち原告に生じた損害額

争点2のうち原告に生じた損害額に関し、原告は、別表の請求欄記載のとおり主張する。

これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容欄記載の金額を、原告の損害として認める。

1  損害

(一) 治療費

甲第五、第六号証、第一〇号証の二、原告本人尋問の結果によると、原告は、本件事故直後は身体に痛みを感じなかったものの、次第に痛みがひどくなり、平成九年九月三日に、村中クリニックに通院したこと、同クリニックの医師による診断は、頸部捻挫、右手関節捻挫であったこと、原告は、同クリニックの紹介により、同日から同年一二月一二日まで、柔道整復師である青龍堂整骨院こと米田伸一の施術を受けたこと(実通院日数一〇日)、右治療費は、村中クリニックが金八四四〇円、青龍堂整骨院が金六万五九七〇円であることが認められる。

そして、これらによると、右治療費合計金七万四四一〇円は本件事故と相当因果関係のある損害であるということができる。

(二) 文書料

甲第一〇号証の一によると、原告は、村中クリニックの診断書代金三〇〇〇円を支払ったことが認められる。

(三) 休業損害

甲第七号証、原告本人尋問の結果によると、原告は、本件事故当時、父親の経営する親輪工業で、船舶修理工として働いていたこと、本件事故直前の平成九年六月から八月まで(合計九二日間)の原告の収入は、金一二七万三五〇〇円であったこと、本件事故による傷害のため、原告は、同年九月一日から一四日までの一四日間、休業のやむなきに至り、この間の給与はまったく支給されなかったことが認められる。

したがって、休業損害は、次の計算式により、金一九万三七九三円である(円未満切捨て。以下同様。)。

計算式 1,273,500÷92×14=193,793

(四) 慰謝料

前記認定の本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、通院期間、その間の治療の経緯、その他本件に現れた一切の事情を勘案すると、本件事故により原告に生じた精神的損害を慰謝するには、金五万円をもってするのが相当である。

(五) 修理費用

(1) 甲第二号証、原告本人尋問の結果によると、本件事故により原告車両の外装に損傷が生じたこと、右損傷を修理するには金二八四万九七九四円を要することが認められる。そして、これは、本件事故と相当因果関係のある損害であるということができる。

(2) また、甲第三、第四号証、原告本人尋問の結果によると、本件事故後、原告は、原告車両を兵庫県生田警察署まで運転していったこと、その途中、原告車両のエンジンがオーバーヒートして煙が出たこと、しかし、原告は、無理に原告車両を警察署まで運転していったこと、原告車両のエンジンの脱着には金八四万六〇六九円を要すること、右見積費用(見積もりのための運送代を含む。)として金一四万七〇〇〇円を要したことが認められる。

ところで、右認定事実によると、原告車両のエンジンがオーバーヒートしたのは、本件事故後の走行によるものであって、少なくとも煙が出た時点で走行を中止すれば、損害の拡大を最小限度に抑えることができたであろうことは容易に推認することができる。

したがって、エンジンに関する修理費合計金九九万三〇六九円をすべて本件事故と相当因果関係がある損害とするのは相当ではなく、信義則上、被告が賠償責任を負うべき損害をその二分の一の金四九万六五三四円とするのが相当である。

(3) (1)及び(2)の合計は金三三四万六三二八円である。

(六) レッカー代金

甲第九号証の一、二、原告本人尋問の結果によると、原告車両は、兵庫県生田警察署に到着した後、自走することができなくなったこと、このために、原告は、レッカー車を依頼し、その費用金四万七〇〇〇円を支払ったことが認められる。

そして、右レッカー代金は、本件事故と相当因果関係のある損害であるということができる。

(七) 小計

(一)ないし(六)の合計は、金三七一万四五三一円である。

2  過失相殺

争点1に対する判断で判示したとおり、本件事故に対する原告の過失の割合を一〇パーセントとするのが相当であるから、過失相殺として、原告の損害から右割合を控除する。

したがって、右控除後の金額は、次の計算式により、金三三四万三〇七七円となる。

計算式 3,714,531×(1-0.1)=3,343,077

3  弁護士費用

原告が本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、被告が負担すべき弁護士費用を金三〇万円とするのが相当である。

三  争点2のうち被告に生じた損害額

1  損害(修理費用) 金一一万五六七八円(請求額も同額)乙第一号証の一、二、被告本人尋問の結果によると、本件事故により、被告車両には修理費用金一一万五六七八円を要する損傷が生じたことが認められる。

2  過失相殺

争点1に対する判断で判示したとおり、本件事故に対する被告の過失の割合を九〇パーセントとするのが相当であるから、過失相殺として、被告の損害から右割合を控除する。

したがって、右控除後の金額は、次の計算式により、金一万一五六七円となる。

計算式 115,678×(1-0.9)=11,567

3  弁護士費用 認めない(請求額は金一万二〇〇〇円)

被告が本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であるが、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情、特に本件事故に対する過失の割合が被告の方がはるかに大きいことを勘案すると、被告に生じた弁護士費用の一部にせよ、原告に負担させるのは相当ではない。

第四結論

よって、原告の請求は主文第一項記載の限度で、被告の請求は主文第二項記載の限度で、それぞれ理由があるからこれらの範囲で認容し、原告及び被告のその余の各請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条本文を、仮執行宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 永吉孝夫)

別表(原告の損害)

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